アプリアイコンに関する商標登録の傾向
業務内でスマホアプリに関する知財権の取得を検討することとなったのだが、商標権の取得にあたって、他企業はどんなアプリアイコンについて商標権を取得しているのだろうか気になり、軽く調べてみた。 ブランドイメージの戦略上、何かアイコンのデザインや権利取得の方向性のようなものが見えると参考になるかと思ったからである。 とはいえそんなに気合を入れた調査はしていないのだが、とりあえず代表的な企業としてGoogleとAppleの2社について簡単に日本国内で取得しているアプリ関連の商標権の調査をしてみた。 すると、両者でかなり異なる傾向が見えてきた。 Googleの登録商標 まずはGoogleの代表的な登録商標を掲載する。 ぱっと見てもわかるように、Googleは色の統一性にかなり重点を置いている様子が伺える。 アプリ関連 ※左から登録5930787、5953068、6209108、6351556、6418757、6522923、6787549 基本的にシンプルな形状としつつも、アイコンの色を「赤」「黄」「緑」「青」の色のみで構成し、かつ4色全てを使うようデザインしていることがよく分かる。 色が与える印象は強く、アイコンの形状は違えど、色を見れば「あ、これはGoogleのアプリなんだな」と分かるようになっている。 選択した色にも意味があるようで、赤、青、黄色の三原色は、ルールや常識を表しており、そこに緑が加わることで「常識にとらわれない」という意味が込められているそうである。 色の三原色であれば「シアン」「マゼンタ」「イエロー」のような気もするが、ここで紹介されている三原色は、また別の意味を定義しているのだろう、多分。 ちなみに2025年5月頃に「G」のロゴのデザイン変更があったようで、色間の境目がくっきり分かれたものから、グラデーションに変わるとのこと。 そのため、厳密にはグラデーション部分で4色以外の色も出てくることとなるが。視認性に大きな変化は無さそうである。 このように、Googleからは自社サービス全体に統一したブランドイメージを普及させる意図が感じられる。 Youtube関連 ※左から登録4999383、5727477、5889012、5960866、6057596 Googleは2006年10月9日にYoutubeを買収しており、それ以降は再生ボタンのアイコンをはじめ、いくつかのボタンのデザインに関して商標登録を行っている。 いずれも赤色で統一されており、やはり色で「これはYoutube」と見分けられるようにしている意図が感じられる。 再生ボタンのデザイン自体はありふれているようにも見えるが、ちゃんとYoutubeと認識できるので、ブランドイメージが浸透していると思わせられる。 Appleの登録商標(アプリ関連) ※左から登録2173459、2210825、5865311、5924575、6072269、6072304、6080354 次にAppleを紹介する。 Appleはリンゴのマークの著名度が際立っており、当然このアイコンも商標登録されている。 Appleという社名はジョブズによって決められたが、そこからリンゴのマークの商標となるのは自然かと思う。 リンゴにはかじり跡があるが、デザインした「ロブ・ジャノフ」氏によれば、他の丸い果物と誤解されないために設けたとのこと。 アダムとイブの禁じられたリンゴにちなんで人類の進歩を表しているとか、「bite(かじる)」とコンピュータにおける情報量の単位「byte(バイト)」をかけている、という説もあったらしいが、蓋を開けてみるとシンプルな理由である。 一方、その他のアプリを表すアイコンはというと、特に統一したデザインを採用している感じではない。 どちらかと言うと、アイコン単体でどんな機能を提供するアプリなのかを把握させることを意識したデザインとなっている。 Mac、iPad、iPhoneといったデバイスにはリンゴのマークが付されているのとは対照的である。 アイコンのデザイン考察 というわけで、以下の表の通り、両社とも異なったアイコンのデザイン戦略を取っているように見受けられる。 企業名 戦略 Google 色を統一することで、自社から提供されたアプリである点を認識させる Apple 直接的なデザインにより、アプリの機能を直感的に理解してもらう 特に面白いと思ったのは、Googleは色という要素に特徴を見出し、それを共通化することで様々なアプリのアイコンに統一感を持たせている点である。 通常は、Appleのように形状も特徴に含めたロゴを使い、車、靴、家電製品といった様々な製品に同一のロゴを付すことでブランドイメージを形成していくことが多いと思う。 これら有形の製品に付すのであればそれで問題ないが、アプリアイコンとなると話は異なる。 製品自体が無形であるが故に、アイコン自身が他のアイコンと異なるデザインである必要が生じる。 ここで、なまじリンゴのような具体的な形状のあるロゴを使おうとすると、異なるアプリアイコンを作成するのが困難となるため、統一感には目を瞑りつつ、異なるデザインのアイコンを設ける必要が生じる。 一方、Googleのように色でブランドイメージを構築すれば、後は形状を変化させることで、アイコン間の差別化はしつつも統一感を持たせることもできる。 とはいえ、Appleのリンゴのロゴはそれ自体が「革新的で、洗練された」強いイメージを形成しているため、主要な製品やサービスに付すことで、ここぞというときに強力な訴求力を発揮できるという強みもある。 どちらが優れているとは一概には言えないとは思うが、こういったアプリアイコン1つとっても コーポレート部門がブランドイメージ戦略を持っておくこと コーポレート部門が開発部門と連携すること の重要性を感じたところである。 アプリのアイコンといえど、会社のブランドイメージに関わる以上は、開発に丸投げしたが故に好き勝手な野良アイコンが生まれるという事態は避けたい。