自社が委託先となる開発委託契約において、誰が「製造物責任」を負うべきか検討する機会があった。

製造物責任法(PL法)を踏まえると、自社が開発した成果物については、委託元ではなく自社にその賠償責任があるのでは?と思っていたが、必ずそうとも限らないようである。

ここで、開発委託契約上の製造物の責任の所在について、整理しておきたい。

製造物責任法(PL法)とは

製造物責任法(Product Liability Law、以下「PL法」)は、製造物の欠陥によって他人の生命・身体または財産に被害が生じた場合に、その製造業者等が無過失で損害賠償責任を負うことを定めた法律である(日本では1995年に施行)。

法の趣旨

従来の民法では、被害者が製造者の過失を証明しなければならず、立証が困難であった。

PL法はこれを改め、過失の有無に関係なく、製造物に欠陥があれば製造者に責任を負わせることとしている。

責任の対象

PL法が適用される「製造物」とは、製造または加工された動産(電化製品、車、薬品、食品など)となる。

責任発生の要件

以下の3要件を満たすと、製造業者等に損害賠償責任が発生する。

  • 製造物に「欠陥」があること(設計上・製造上・表示上の欠陥など)
  • 欠陥により生命・身体・他人の財産に損害が生じたこと
  • 欠陥と損害との因果関係があること

このように、民法709条とは異なり、製造業者等に故意又は過失があったことまでを証明する必要はない。

開発委託契約との関係性

製品の開発・製造が他社に委託される場合(開発委託契約を結んだ場合)、PL法に基づく責任の帰属が問題となることがある。

PL法では、次のようなものが責任を負う。

  • 実際に製造・加工した者
  • 製造業者として表示されている者(ブランド表示者等)
  • 輸入販売者(外国製品を日本に持ち込んで販売する者)

つまり、開発・製造を他社に委託していたとしても、製品に自社ブランドを表示して販売していれば、委託元もPL法上の「製造業者等」として責任を問われる可能性がある。

PL法上の「対外的責任」は制限できない

PL法は被害者保護のための強行法規的な性格を持っているため、消費者など第三者(被害者)からされた損害賠償請求に対しては、原則として賠償責任を負うこととなる。

責任の所在は?

PL法により、消費者に対する「対外的な責任」は法律で定められるものの、委託元と委託先の契約関係では、PL法の強行規定が及ばない。

つまり、誰がその賠償を「最終的に負担するか」は、開発委託契約の中で当事者間の合意により自由に定めることが可能である。

例えば、「製品に欠陥があった場合、それが委託先の設計ミスや製造不良によるものであれば、委託元が消費者に賠償した金額を委託先に求償できる」との契約条項は有効となる。

もちろん、「共同責任」や、「原因に応じた按分」などの規定を設けることもできる。

責任の所在については交渉を要するだろうが、製品に欠陥があった場合の責任分担について契約で定めておくことは重要である。

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