契約において当たり前の話ではあるが、改めて契約期間について考えてみたい。

まずそもそも、契約に契約期間は常に必要だろうか?

契約期間の設定が必要か否かは、契約の性質(目的)と当事者の義務の継続性によって分類される。

契約期間を定めるべき契約

義務の履行が一定の期間に限られる契約が該当する。

一体いつからいつまで義務が発生するのか不明確になってしまうのを避けるため、契約期間は明確にする必要がある。

開発委託契約(請負)

成果物の完成が目標なので、完成までの開発期間(いつまでに成果物を完成させるのか)を区切る必要がある。

開発委託契約(準委任)

こちらも、業務をいつまで行うかを明確化するために必要となる。

存続条項

なお、上記契約では瑕疵対応などの存続条項を定めることが通常だが、それらはいちいち期限を設けないことが多い。

しかし、存続対象に秘密保持条項が含まれる場合は、秘密保持条項が有効となる期限は定めておくことが推奨される。

時間の経過とともに、契約を通じて得られた秘密情報も陳腐化するし、何よりも半永久的に秘密情報を管理する負担を強いるのは当事者にとって酷だからである。

ただ、秘密保持が片務型(当事者の一方が秘密保持義務を負う形)であり、自社が義務を負わせる立場の場合は、敢えて自分からは期限を定めないこともあるかと思う。

親切心で、わざわざ自分の提供した秘密情報が将来開示されてしまうことを許容する必要はない、ということである。

報酬支払いまで契約期間を設けるべき?

開発委託契約では、例えば契約期間の最終日に成果物を納品した場合、検収や報酬の支払いのタイミングが契約期間を超えることとなる。

それでは、報酬の支払いが完了する日までを契約終了日と定めるべきだろうか?

結論から言うと、契約期間は、原則として「業務遂行(成果物の納品など)」までを対象とし、検収や支払いといった後続処理は期間外でも有効に行えるよう契約条項で定めるのが一般的である。

契約期間は「委託業務を行う期間」を定義するもので、支払い等の事後手続きは必ずしも含める必要はない。

ただし、契約終了=全ての義務の終了と解釈されるリスクを避けるため、それらの義務に関する条項については、存続条項(契約期間満了後も有効とする旨を記載する)とするのが実務的である。

もちろん、契約期間を「報酬の支払いが完了するまで」と定めてもよく、この場合は具体的な日付まで定める必要は無い(いつまでに成果物を収めるか、とか、いつまで準委任の業務を行うか、という条件は入れる必要はある)。

秘密保持契約(NDA)

先に述べた理由により、情報の秘匿義務がいつまで続くかを明示する必要がある。

秘密保持期間は概ね2〜5年とすることが多いが、そこは開示する情報の性質に応じて相手方と調整することとなる。

ライセンス契約

契約期間を定めることで、特定期間だけ使用を許諾し、期間終了後は使用不可とすることができる。

買い切りのライセンス契約としたければ期間を定めない場合もあるとは思うが、期間を設けることの方が多いかと思う。

この契約では、急にライセンスが切れることによるリスクを避けるため、自動更新条項を含める場合も多い。

もっとも、うっかり契約更新の拒絶を忘れると、例えば1年余分にライセンス料を支払うこととなる可能性もある点は注意したい。

自動更新を拒絶できる期間は、多少余裕を持って設定したいところである。

賃貸借契約

土地・建物・物品などを一定期間貸し、その使用収益を認める代わりに賃料を受け取る契約となる。

契約期間を明示しなくてもよい契約

一回限りの義務であり、履行した時点で契約が終了する。期間よりも「完了」が重要となる。

売買契約

商品を渡し、代金を支払えば契約完了。

したがって、通常、契約期間は設定しない(引渡期限や支払期限はある)。

贈与契約

無償で物や権利を与える契約。

こちらも一度贈与したら完了なので、期間設定は不要。

まとめ

契約期間について契約種ごとにまとめると、以下の表のようになる。

期間を定めるときは、特有の留意点を考慮しつつ、自社に不利な条件とならないよう交渉するのが基本的な考え方となるだろう。

契約期間 契約種 備考
必要 開発委託契約(請負) ・存続条項(特に秘密保持条項)に留意
・支払い等の事後手続きも存続条項とすることが多い
開発契約(準委任)
秘密保持契約 期間は2〜5年程度が多い
ライセンス契約 自動更新条項を設ける場合あり
賃貸借契約  
不要 売買契約 引渡期限や支払期限はある
贈与契約  

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