会社で、ある新製品のラインナップを区別するニックネームとして、それぞれにある漫画のキャラクター名が付けられていた。

「社内利用に留めておけば、問題無いですかね?」とのこと。

キャラクターのデザイン自体を模倣していれば、ちゃんと許諾を得ていないと著作権違反となってしまうが、名前だけ使わせてもらうのは問題になるだろうか?

著作権の観点

キャラクター名自体に著作権が付与されることはない。

著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されている。

キャラクターと言われるものは、それ自体が思想または感情を創作的に表現したものということができず、著作物に該当しないためである。

この点は、最高裁の判決(ポパイ事件:最高裁、平成4年(オ)第1443号、平成9年7月17日)でも、以下のように判断が示されている。

著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が 反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。・・・

では製品名として使っていいか?というと、まだ以下の法的リスクがある。

商標権の観点

キャラクター名がすでに他者によって商標登録されている場合、その名称を商品名として使用すると、商標権の侵害となるおそれがある。

商標権は、登録商標と指定商品・役務のセットで登録されている。

したがって、使用する対象製品が指定商品・役務と同一または類似する際は侵害となる点には留意すべきである。

では、キャラクター名が商標登録されていなければ問題ないかというと、まだ懸念が残っている。

不正競争防止法の観点

不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争を守り、他人の信用・努力・成果を不当に利用する行為(=不正競争)を防ぐための法律となっている。

商標法とは異なり、登録を前提としない保護制度(著作権と同一)である点が大きな特徴となっている。

製品にキャラクター名を使う場合は、例えば以下のような禁止行為に該当する可能性がある。

  • 周知表示混同惹起行為(不正競争防止法第2条第1項1号) 他人の商品等表示として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為
  • 著名表示冒用行為(同第2条第1項2号) 自己の商品等表示として、他人の著名な商品等表示と同一・類似の表示を使用し、またはそのような表示が使用された商品を譲渡引渡等する行為
    ※混同の要件は不要
  • 商品形態模倣行為(同第2条第1項3号) 他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡したり、貸し渡したりする行為

結論

というわけで、製品にキャラクター名を付す行為は、著作権法上では問題ないものの、商標法、不正競争防止法の観点からは法的リスクが残ることとなる。

名前が消費者に表示される予定の場合は勿論のこと、仮に社内での呼び名に留まる場合でも、対外的な資料にその名前が紛れ込むリスクも存在する。

特別な理由がない限りは、キャラクター名の使用は避け、別名に変更することが望ましいだろう。

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