今後、定期的に開発の委託を発注するとのことで、開発委託基本契約のためのドラフトを作成することとなった。
委託の形態としては、準委任型のパターンもあれば、請負型のパターンもあるとのこと。
その際、基本契約を準委任用と請負用とに分けるべきか、それとも1つの契約書にまとめてしまうか、どちらにしようか考えたため、備忘録として残しておきたい。
準委任と請負との間で留意すべき相違点
基本契約書を別々にするか1つにまとめるかによらず、準委任と請負とでは適用される条項が異なる点はケアする必要がある。
例えば、以下の条項は請負の場合のみに適用されるべきかと思われる。
- 成果物の納品・検収
- 契約不適合
- 製造物責任
もし1つの契約にまとめるなら、これらの条項の最後に「準委任として発注された場合には適用しない」といった文言を入れておくのが良い。
また発注書のテンプレートも異なってくるかと思うので、契約書に添付するテンプレートは準委任用と請負用とでそれぞれ用意することが必要かと思う(発注書で準委任か請負かを特定する形)。
基本契約書を別々にするか、一本化するか
基本契約書を別々に作成すると、法的リスクは緩和できる一方、契約コストは高くなる傾向がある。
一方、契約を一本化すると、その逆の関係になる。
両者のメリットとデメリットをまとめると、大体以下の表のような感じかと思う。
| 項目 | 別々に作成 | 一本化 |
|---|---|---|
| 準委任と請負の法的性質明確化 | 〇 | ✕ |
| 各契約の責任範囲や義務の明確化 | 〇 | ✕ |
| 契約書作成コスト | ✕ | 〇 |
| 契約書管理・更新コスト | ✕ | 〇 |
| 発注時の準委任/請負明確化 | 〇 | △* |
*発注書フォーマットで準委任か請負かを明記するようにしておけば、リスク低減可能
また、紙の契約であれば別々に契約書を作成すると印紙代が余分にかかることとなる。
しかし、電子契約であればそういったデメリットは発生しない。
ただし、電子契約の海外における有効性は国によって異なるので、海外企業との取引で電子契約を利用する際には、取引先の国の法律を事前に確認する必要がある点は注意が必要である。
このように一長一短あるが、基本契約書を一本化したときも即座に法的リスクが高まるわけではなく、条項や発注書フォーマットで不明確な記載とならないようきちんと手当てがなされていれば、個人的にはそれほど問題ではないかなと思う。
結論としては、コストを抑えたければ一本化、より法的に万全を期すのなら別々の作成となるだろうが、そんなに両者で実務上の差は無いというのが正直なところである。
仮に一本化しようとする際は、契約の相手方から「準委任と請負とで契約は分けておきたい」と要求されることもあるだろうが(特にこちら側がドラフトする場合)、そこは相手方に合わせてあげても良い。
もっと交渉すべき条件があろう中で、上記の形式的な契約書構成に関しては譲歩しても問題ない部分かと思われる。