著作権法上、他人の著作物をそのまま使うと原則として著作権侵害になるが、「引用」としての使用であれば、著作権者の侵害とはならない。
引用と認められるための要件はに、ざっと以下の項目があり、詳細は別の記事でも触れている通りである。
- 公表されている著作物であること
- 「引用の必然性」があること
- 「引用部分」が明確になっていること
- 「主従関係」が明確であること
- 出典を明示すること
- 引用にあたり改変しないこと
ついブログを面白く見せようと、記事に漫画のコマを貼り付けたくなるが、作者の許諾なく使うと著作権侵害となってしまう。 しかし、著作物の利用は全...
ここで、おそらく最も争点となるであろう「引用の必然性」があることについて考えてみたい。
上の記事で述べた通り、自分の表現にとって、他人の著作物を引用する必要性がなければならない。
より具体的には、論評・批評・研究・紹介などで、「その著作物を引用しなければ、文章や論旨の展開が成り立たない」ほどに、その引用が不可欠な場合にあたる。
もう少し踏み込んで、具体的に必然性が認められるであろうケースと、認められないであろうケースを考えてみたい。
※その正確性について保証するものではありません
引用の必然性ありと認められる例
- 美術評論における絵画の引用
ある画家の作品についてその該当作品の画像を掲載し、「人物の輪郭線が曖昧に描かれており、印象派的である」と論評する場合は、絵の具体的な表現技法を対象にして論評しているため、必然性が認められ得る。
- 映画評論における台詞の引用
「この映画では、主人公の『○○○○』という台詞にXXXXという心情が反映されており、テーマが凝縮されている」と分析し、その台詞を掲載する場合は、台詞が評論の中心であり、台詞の掲載が論旨の展開に必要不可欠であることから必然性が認められるであろう。
- 音楽評論で歌詞を引用
「この曲の歌詞は戦前の記憶を強く想起させる。『○○○○』という表現に、当時の時代背景を踏まえた表現が見られる」として歌詞の一部を引用する場合、その歌詞自体が評価・批評の対象となるため、必然性が認められ得る。ただし、歌詞の一部しか評価対象でないにも関わらず、歌詞の全体を載せる行為には必然性は認められないであろう。
引用の必然性ありと認められない例
- 雰囲気づくりのための画像添付
音楽のレビュー記事に、アーティストのジャケット画像を「イメージとして」掲載する場合、ジャケット画像自体は批評の対象ではなく、単なる装飾なので、必然性なしとされるであろう。仮に曲の内容を論評していたとしても、ジャケット画像自体の構成などを論じていないのであれば、その掲載が曲の批評に必要不可欠とまでは言い切れず、必然性が認められるかは微妙なところである。
- 解説なしの作品全文引用
俳句を掲載しているものの、その内容について解説が無い場合、その作品を引用する必然性がない。ただ、すでに著作権の保護が及ばないほど古い俳句(例:『夏草や 兵どもが 夢の跡』)であれば、掲載しても問題ない。その他、昔のクラッシック音楽なども著作権の保護対象外となる。
- 単なる目次代わりの使用
複数の映画を紹介する記事で、「おすすめ映画10選」として映画のポスターを並べるが、ポスターの内容個に踏み込まず、タイトルの紹介のみであれば、引用の必然性なしと思われる。
ブログに画像を載せる場合は?
この場合も、特段判断基準が変わることはなく、掲載した画像自体について論評、研究する場合であれば掲載の必然性があるといえるだろうし、単に雰囲気づくりのためであれば必然性は認められない。
ブログでは、漫画、アニメ、映画といったコンテンツのレビューをすることも多いかと思うが、読者の目を惹きつけるためにコンテンツの一部の画像(漫画の1コマ、映画のワンシーンなど)を貼り付けたくなることも多いかと思う。
しかし、その際は貼り付けた画像自体(画像に表示されている人物の表情、状況など)について何かしら文章でレビューされていないと、引用の必然性は認められないというリスクは生じるであろう。
なので個人的な見解ではあるが、あるコンテンツのレビューを行う際、コンテンツを代表する画像(漫画の表紙、DVDのパッケージの表紙など)を貼り付ける行為自体は、ちゃんとその画像自体にも着目したレビューが行われていないと、引用の必然性なしとされるリスクが存在するのではないかと思われる。