自社の製品やサービスの知名度を上げる手段の1つとして、他社の著作物を利用することが考えられる。

例えば、自社製品などに有名漫画のキャラをデザインしたり、自社イベントの広告やノベルティに、有名なアニメに出てくるグッズを用いる機会があるかもしれない。

この場合は、当然著作権者からの許諾が必要になる著作権者に問い合わせをして各種条件を合意したうえで使用許諾を得ることとなるが、いくつか留意点を挙げておきたい。

ライセンス条件

ライセンス条件の骨格としては、「独占性」「期間」「地域」「用途」を押さえておく必要がある。

独占か、非独占か

「著作物を自分が使用可能か」という観点のほか、「第三者にも同じ著作物を使わせて問題ないか」という点は検討事項になろうかと思う。

唯一の使用者になりたいなら独占的なライセンス契約とすることが必要だが、ライセンサーも色々な企業に使ってもらいたい場合が多いため、通常は非独占となることが多いと思われる。

ライセンス期間

選択肢としては、以下のパターンに層別される。

  • 永続
  • 期間限定
  • 期間限定(更新可能/自動更新の有無)

期間限定イベントに使うのなら期間限定の契約でも問題無いが、そうでない場合は固定費が嵩むこととなる。

使用する側からすれば期間を気にせず使える永続がベターだが、その場合はライセンサーは将来の利用料を受け取れなくなるため、実際は期間を設けて使用を許諾してもらうことが多い。

仮に永続とした場合であっても、対価は高額になるであろう。

ライセンス地域

著作物は国境を越えて利用されるため、世界各国は様々な国際条約を結んで、著作物や実演・レコード・放送などを相互に保護し合っている。

日本も各条約に加入しているため、世界の大半の国と相互の保護関係がある。

著作物が利用される際の法律の適用に関しては、例えば、日本の著作物がアメリカで利用される場合にはアメリカの著作権法が、逆にアメリカの著作物が日本で利用される場合には日本の著作権法が適用されるのが原則となる。

というわけで、ライセンスのテリトリーについては日本国内だけでなく外国についても指定することが考えられる。

具体的には、例えば以下のようなパターンとなる。

  • 日本国内のみ
  • 特定の国・地域
  • 全世界

ライセンス用途

ライセンサーとしてはどんなものにも使われてしまうとガバナンスが効かなくなってしまうため、例えば、利用できる媒体や業界を限定(例:書籍出版のみ、ゲームのみ、Web広告のみ)したり、または用途を限定(○○商品への掲載のみ、△△イベントの販促品のみ)することが考えられる。

ライセンス費の支払い方法

両者間で合意が取れればライセンス料の価格や支払い方は特に限定は無いが、支払い方法で言うと主に以下のような選択肢が挙げられる。

  • 一括支払い
  • 定額支払い
  • ランニングロイヤルティ
  • これらの組み合わせ

もし顧客に販売するような自社製品に用いる場合であれば、「ランニング・ロイヤリティ方式」を取ることが考えられる。

例えば、「製品1個あたりの販売価格 × ●% × 個数」というような算出方法である。

ここで、販売価格を実際の販売価格から消費税、輸送費等を控除した額を指すように定義することもあり得るが、その場合はライセンシーが各種諸費用をわざと高く計算することもあり、その計算根拠についてトラブルが生じる原因ともなる。

したがって、販売価格は諸経費や手数料、税金などを含めた「グロス価格」とするのが望ましい。

一方、ノベルティに用いる場合だと、実際に販売するものではないことから、販売価格という指標を使うことはできない。

この場合は、販売価格ではなく、製品の1個あたりの原価を使って算出することが考えられる。

またライセンサーとしては、ライセンス許諾はしたものの、ライセンシーの製造・販売数が少なすぎるとライセンス料が予想を大幅に下回ることもある。

そういったケースを回避するため、最低限のライセンス料はいくら、ランニングロイヤリティ方式で算定した料金が上回ったらその金額を支払う、といったスキームを組むことも可能である。

中には展示物として使用するケース等、販売価格・原価のいずれで算出する方法も適当でない場合もあるので、その際は一括支払いや、定額支払い方式を採用することとなる。

その他留意点

その他、著作権のライセンス時における主な留意点を挙げておきたい。

著作者人格権は譲渡できない

日本法では、著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権など)は譲渡不可である。

したがって、実務上は「著作者人格権を行使しない」との条項を入れる。

二次利用の範囲を明記

もし著作物の改変や二次利用を予定しているのであれば、改変や翻案・二次的著作物の作成(翻訳、リメイクなど)が可能かどうかを契約で明確にしておく必要がある。

対価の妥当性

これは完全買い取りにする場合、権利者は将来の利用料を受け取れなくなるため、初期対価が高額になるのが通常。

第三者権利の有無

許諾を依頼する作品に第三者素材(写真、音源、製品など)が含まれていれば、第三者部分の利用制限は残る点は注意すべきである。

その他

これは著作権に限った話ではないが、サブライセンスの可否、契約解除条件等も考える要素となってくる。

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