開発委託契約においては、主に以下の2つの契約形態が用いられる。
- 請負契約(民法632条)
- 準委任契約(民法656条)
- 履行割合型
- 成果完成型
従来の準委任契約は業務そのものの遂行が目的であって、成果物の納品義務はないものとしているところ(履行割合型)、実務上は準委任契約の中でも「成果完成型」と呼ばれる慣行があり、これが請負契約との違いを分かりにくくしている。
以下に、準委任契約の「履行割合型」と「成果完成型」との違い、更に「成果完成型」と請負契約との主な違いを整理して示す。
準委任契約の「履行割合型」と「成果完成型」
準委任契約における「履行割合型」と「成果完成型」は、いずれも成果物の完成義務を負わないという点で共通するが、報酬の支払基準や業務の性質において実務的に大きな違いがある。
履行割合型では業務の遂行自体を目的とするため、業務自体が報酬の対象となり、「作業時間」「作業工数」「作業量」等に基づいて、業務遂行の割合に応じて対価の額が決定される。
対価の支払いタイミングは、例えば月毎に請求するといった対応が考えられる。
一方、成果完成型は、一定の成果に向けた作業(例:プロトタイプ作成、設計書の作成など)が求められることから、成果物の完成は義務ではないものの、成果物の納品が報酬対象とされる。
したがって、請負契約と同様に、納品をもって対価を支払うこととし、対価の額は納品物の性質によって決められる。
このように、履行割合型とは異なり成果物の受け取りをもって対価を支払うため、所望の成果物が得られないのに対価を支払わないといけないというリスクは小さくなる。
準委任契約(成果完成型)と請負契約との違い
いずれの契約も、成果物の納品が対価の対象となっている点は共通する。
しかし、成果完成型の準委任契約は「成果物の納品をもって対価を支払う」約束をするだけであり、請負契約のような「仕事を完成させる義務」は無い点が異なる。
また、受託者が善管注意義務を払って仕事を履行した結果である限りは、成果物が求める水準に達していなくても問題ないとされる。
これだと、委託元としては所望の成果物を確実に受け取ることができる請負契約の方が望ましいようにも見える。
一方、成果完成型だと成果の完成義務はないものの、途中で成果物の仕様が変わるケースにも対応しやすい点がメリットとなる。
実務での使い分けの目安
委託業務内容や納品物の性質によって、どの契約類型が望ましいかを以下の表に整理する。
実務上は無理に請負・準委任という類型に当てはめず(請負、準委任とは明記せず)、納品物の有無、納品物に関する事項(納品物の内容、引き渡し方法、検収方法など)、対価の額、対価の支払い条件など、必要な条項を設けて対応することもあるが、一つの目安となれば幸いである。
| 契約類型 | 契約の特徴 | 適した業務内容 |
|---|---|---|
| 準委任契約(履行割合型) | 成果物を前提とせず、作業プロセスや知見提供が価値の中心 | ・運用/保守 ・プロジェクト管理 ・技術支援 ・コンサルティング |
| 準委任契約(成果完成型) | ・成果物の提出が期待されるが、完成責任は負わない 「何らかの成果」は出るが、求める水準である必要はない |
・要件定義書、設計書、プロトタイプの作成 ・技術調査、評価レポート作成 ・ユーザーマニュアル草案作成 |
| 請負契約 | ・成果物の完成義務あり ・瑕疵担保責任も原則発生 |
・実装されたプログラムの作成 ・検収可能なアプリ、Webシステムの作成 ・ハードウェアの作成 |