2026年1月より、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)という法律に変更される。

気になったので、改めてどんな内容の法律で、委託業務での注意点をメモにしてみた。

適用対象取引

対象となる取引は、取引の内容と、委託者/受託者の資本金基準および従業員基準によって決定される。

なお、取適法では新たに従業員基準が設けられるとともに、適用対象となる取引の内容に「特定運送委託(製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託)」が追加されたことで、規制及び保護の対象が拡充されている。

具体的には、以下の通りである。

「製造委託」「修理委託」「特定運送委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に限る)」

委託事業者 中小受託事業者
資本金3億円超 資本金3億円以下
資本金1千万円~3億円 資本金1千万円以下
従業員300人超 従業員300人以下

「情報成果物作成委託」「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理を除く)

委託事業者 中小受託事業者
資本金5千万円超 資本金5千万円以下
資本金1千万円~5千万円 資本金1千万円以下
従業員100人超 従業員100人以下

義務・禁止事項

委託事業者には、4つの義務と11の順事項が課されている。

4つの義務

  1. 発注書面の交付(発注内容を書面または電子メール等の電気的方法により明示)
  2. 書類の作成・保存義務(取引記録を電磁的記録等として2年間保存する)
  3. 支払期日を定める義務(成果物の受領日から60日以内に支払期日を定める)
  4. 遅延利息の支払義務(遅延日数に応じ、年率14.6%の利息を支払う)

11の禁止事項

  1. 受領拒否
  2. 支払遅延(手形等での支払い手段もNG)
  3. 減額
  4. 返品
  5. 買いたたき
  6. 購入・利用強制
  7. 報復措置
  8. 有償支給原材料等の対価の早期決済
  9. 不当な給付内容の変更、やり直し
  10. 協議に応じない一方的な代金決定(※)

※取適法で新たに追加

発注前の作業依頼は違法?

ところで、委託業務の内容に齟齬が生じないよう、委託予定の企業にサンプルケースを提示し、そのケースを処理してもらった上で生じたサンプル成果物を確認する、ということがあり得る。

また、その場合は具体的な作業内容を踏まえて委託予定の企業に見積書を作成してもらうこととなるであろう。

このような発注前の作業は、発注書面の交付義務に違反することとなるだろうか?

こちらについては、サンプルケースの処理が委託業務内容の把握や見積書の作成に必要な行為であれば、問題ない。

ただし、その内容が実質的に先行して委託業務を行なっているとみなされないように注意する必要がある。

特に、その作業から生じたサンプル成果物を、本当の成果物の一部として委託元が取り扱わないようにするよう気を付ける必要がある。

取引内容の見直しによる減額は違法?

発注後、社内事情により急遽成果物が不要となったり、計画が大幅に変更となることで、委託していた業務を中止することがあるかと思う。

このとき、残りの業務を中止する代わりに、支払い費用を減額するのは取適法違反となるだろうか?

結論から言うと、不当な減額とならないよう委託先と合意形成がなされていれば問題ない(メール等で合意形成した場合であっても、ちゃんと証拠資料として保存しておきたい)。

例えば、委託先が業務1→業務2という順番で遂行する予定だったとき、業務1まで完了した段階で委託元が中止を求めたとする。

その場合は、委託先が業務1に要した工数等を踏まえて算定した対価を支払えば良い。

見積書でそれぞれの内訳が記載されていれば、その金額を支払うことが考えられる。

もし、委託元が業務2まで遂行することを見込んで業務1の対価を相場より安く見積もっていた場合は、委託先側で業務2が中止となった事情を踏まえて、もう少し高い対価を請求してもらうことがベターかと思われる。

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